
■ ペットの殺処分数(神奈川県) NEW!

- 保健所はなぜ殺処分をするのか?
- "飼えなくなった"動物たち
- 飼い主がわからない動物たち
- 逸走した動物
- 飼い主がいない動物
- 闇に隠された動物たち
- ペットの殺処分を減らすために
- まとめ
- まとめ
日本では毎年何十万頭もの犬や猫が、行政施設で殺処分されています。環境省の調べによると、平成20年度に全国の自治体で殺処分されたペットの数は、犬が84,045頭(うち負傷が1,581頭)、猫が204,050頭(うち負傷が9,302頭)、計287,095頭に上ります。殺処分されている数は知らなくても、「保健所に連れて行けば殺される」ということは、皆さんご存知だと思います。では、なぜペットたちは殺されてしまうのでしょうか?ここでは、ペットたちがなぜ殺されてしまうのかを考えていきたいと思います。
「動物の愛護及び管理に関する法律」の中に以下のような条文があります。行政は「…犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない(同法第三十五条第一項)」とし、この規定は「…所有者の判明しない犬又はねこの引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する(同法同条第二項)」と書かれています。つまり、行政は一般から犬や猫の引取りを求められたら、それに応じなければいけません。そして、この引き取られた犬や猫が、保健所や動物愛護センター、動物保護センター等で殺処分されています。
しばしば動物愛護に意識の高い方たちは、行政に対して「なぜ殺処分をするのか?」「新しい飼い主を探して譲渡すればいいじゃないか?」と抗議をすることがありますが、現状として各自治体に持ち込まれる動物をすべて譲渡することは非常に困難なことです。平成20年に全国の自治体に持ち込まれた動物の数は、犬が113,488頭(うち幼齢が22,678頭)、猫が201,619頭(うち幼齢が150,752頭)、計315,107頭(環境省調べ)にも昇り、1日当たり863頭の犬や猫が何かしらの理由で"不要"となり、当該機関に引き取られているのです。数の問題だけではありません。収容される動物の中には、犬では人を咬んでしまったり、猫では生まれて目も開いていないような状態だったり…それを担当職員の方たちが譲渡を行える状態まで、飼育管理することは非常に難しいことなのです。もちろん、行政も全く何もしていないわけではなく、なるべく殺処分しないで済むように返還・譲渡にも力を注いでいます(自治体によって温度差はありますが…)。平成20年度に全国自治体で返還・譲渡された動物の数は、犬が33,351頭(うち負傷が577頭)、猫が8,810頭(うち負傷が499頭)、計42,161頭となっており(環境省調べ)、この数は年々増加しています。
このように、"殺処分"という行為を行っているからといって、行政を責めることは間違っています。その原因を作っている、動物を持ち込む側に問題があるのです。では、なぜ動物たちは保健所等に持ち込まれるに至るのでしょうか?
先述の条文でも示したように、行政機関に持ち込まれる犬や猫には大きくわけて2種類あります。「飼い主がわかっている動物」と「飼い主がわからない動物」です。
「飼い主がわかっている動物」は、飼っている犬や猫が"何らかの理由"で飼えなくなり持ち込まれる場合を指します。"何らかの理由"にはさまざまあります。「引っ越すから」「子供がアレルギーだったから」「(飼い主が)年をとって面倒をみれなくなったから」「ペット不可の住宅で大家に見つかったから」「リストラにあったから」……。どれももっともらしく聞こえますが、"いのち"を手放す理由には値しません。さらに、耳を疑うような放棄理由も数多くあります。「トイレを覚えないから」「マンションの規約にある大きさよりも大きくなってしまったから」「かわいくないから」「子供が飽きたから」……。動物を飼う以上、最期まできちんと面倒をみるのが常識であり、"いのち"を預かる者としての責任ですが、彼らには常識も責任もモラルさえもありません。以前に比べ飼い主のモラルも高まってきていますが、上記のような無責任な理由によってペットを手放す飼い主がまだまだ多いのが現状です。
「飼い主がわからない動物」が行政機関に持ち込まれる数は、実のところ、「飼い主がわかっている動物」よりも多いのが現状です。ALIVEの調査によると、平成20年度に「飼い主がわからない動物」が全国各自治体に持ち込まれた数は、全体数の65.2%(犬で捕獲を含む)。では「飼い主がわからない動物」とは一体何でしょう?「飼い主がわからない動物」にも大きくわけて2種類あります。
「散歩中に逃げ出してしまった」「窓から知らない間に外に出ていってしまった」「朝起きたらいなくなっていた」……。こんな相談が本会にも多く寄せられます。普段はきちんと管理していても、不意をつかれてペットが逃げ出してしまうことは全くないとは言い切れません。しかし、逃げ出した後に飼い主がわかるものを着けていなければ、どこの誰が飼っている動物なのかはわかりません。ALIVEの調査によると、2007年度に逃げ出してしまったペットが飼い主のもとに返還された割合は、全国で18.8%にすぎません。「首輪をつけるのはかわいそうだから」と普段から着けていない方が多くいらっしゃいますが、万が一、逃げ出してしまった場合の命綱ですから必ず迷子札等、飼い主が分かるものを明示しておくことが大切です。また、マイクロチップを挿入している方もいらっしゃいますが、各自治体や動物病院におけるマイクロチップリーダーの普及率もはっきりとはしておらず、挿入していたとしてもそこにリーダーがなければ殺処分されてしまう可能性もあります。
「飼い主がいない動物」も大きく2つに分けられます。「捨てられた動物」と「野良化した動物」です。「捨てられた動物」――つまり遺棄された動物は、飼い主が野外に捨てたペットを指します。ペットを捨てることは「動物の愛護及び管理に関する法律」によって罰せられる違法行為ですが、後を絶たないのが現状です。当然、人がたくさんいる時間帯・場所に捨てる人はいませんから、人知れず捨てられています。もちろん、そういった動物たちが食べて行けるあてもないので、飢えに苦しんで弱って死んでしまう動物たちもいます。万が一、生き残ったとしても捕獲され行政機関に持ち込まれ殺処分になったり、心無い人たちによって虐待の対象となったりします。
しかし一方で、生き残った動物たちが繁殖をし、何世代にも渡って放浪するケースもあります。それが「野良化した動物」です。いわゆる「野良猫」がその例です。そういった動物たちも、「捨てられた動物」同様、無残な最期を遂げることも少なくありません。
以上、行政機関に持ち込まれるペットを分類してきましたが、実はどれにも当てはまらない動物がもう1つあります。それは、動物取扱業者――すなわちペットショップやブリーダーが持ち込むケースです。動物を売っている業者が、売れなくなった動物の"在庫処分"のために行政機関に持ち込むのです。法律上、動物取扱業者が行政機関に動物を持ちこむことは違法ではありません。これは長年、関係団体の間でまことしやかに囁かれていましたが、明るみには出てきませんでした。しかし、2009年12月 10日付の朝日新聞の記事で、兵庫県尼崎市のブリーダーの実態が大きく取り上げられました(詳細はALIVEウェブサイトへ)。これはまだ氷山の一角にすぎませんが、これを期に世論が高まり規制が強化されていくことを望みます。
ペットの殺処分を減らすためには、まず多くの人が問題を知ることが必要です。マースジャパンリミテッドが2010年に行った意識調査では、対象者600名中、飼育放棄された犬が保健所等に収容されていることを、詳しく知っていたのはわずか15%であり、動物の保護施設の存在を知っているのは23.5%であったと報告されています。ペットが捨てられ、殺処分されることを問題と捉え、動物を飼う一般の方たちのモラルを向上させることが最も重要なことであり根源であると言えます。また、動物を飼うときは、ペットショップ等で衝動買いするのではなく、家族の一員を迎え入れるわけですから、家庭内でよく考え話し合って、最期まで面倒をみることを決意してからにしましょう。そして、なるべく多くの"いのち"を救うために、動物愛護団体や行政機関からもらい受けるようにしましょう。
2010年10月29日
後藤章浩(副会長・事務局長)
太田匡彦 (2010) 犬を殺すのは誰か―ペット流通の闇―.朝日新聞出版.
地球生物会議(ALIVE) (2010) 平成20年度版 全国動物行政アンケート結果報告書(ALIVE資料No.30).
環境省ウェブサイト.http://www.env.go.jp/ (2010年10月29日現在).
地球生物会議(ALIVE)ウェブサイト.http://www.alive-net.net/index.html (2010年10月29日現在).
マース ジャパン リミテッド ウェブサイト.http://www.marsjapan.co.jp/ (2010年10月29日現在).
「迷子の犬を家に帰そう」プロジェクト.http://kaesou-pj.net/index.html (2010年10月29日現在).
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年度 | 殺処分数 | ||
---|---|---|---|
犬 | 猫 | 合計 | |
2008 (H20) | 82,464 (1,581) | 193,748 (9,302) | 276,212 (10,883) |
※環境省ウェブサイトより(()内は負傷動物数(外数)) |

2011年1月2日
後藤章浩(副会長・事務局長)

収容数 | 返還・譲渡数 | 殺処分数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 富山県 | 391頭 | 北海道 | 2,074頭 | 富山県 | 184頭 |
2 | 山形県 | 454頭 | 愛知県 | 2,034頭 | 新潟県 | 199頭 |
3 | 福井県 | 552頭 | 千葉県 | 1,891頭 | 山形県 | 207頭 |
4 | 石川県 | 600頭 | 東京都 | 1,770頭 | 石川県 | 229頭 |
5 | 鳥取県 | 622頭 | 神奈川県 | 1,482頭 | 福井県 | 309頭 |
※環境省ウェブサイトより数値引用算出 |
2008年度における犬の収容数が最も少なかった都道府県は富山県(391頭)で、次いで山形県(454頭)、福井県(552頭)、石川県(600頭)、鳥取県(622頭)の順でした。
犬の返還・譲渡数では、北海道が最も多く(2,074頭)、次いで愛知県(2,034頭)、千葉県(1,891頭)、東京都(1,770頭)、神奈川県(1,482頭)でした。
犬の殺処分数は富山県が最も少なく(184頭)、次いで新潟県(199頭)、山形県(207頭)、石川県(229頭)、福井県(309頭)でした。
収容数 | 返還・譲渡数 | 殺処分数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 福井県 | 1,216頭 | 北海道 | 1,158頭 | 福井県 | 1,032頭 |
2 | 富山県 | 1,331頭 | 千葉県 | 1,041頭 | 富山県 | 1,322頭 |
3 | 秋田県 | 1,403頭 | 神奈川県 | 977頭 | 秋田県 | 1,394頭 |
4 | 石川県 | 1,704頭 | 新潟県 | 517頭 | 石川県 | 1,698頭 |
5 | 鳥取県 | 1,799頭 | 愛知県 | 511頭 | 鳥取県 | 1,767頭 |
※環境省ウェブサイトより数値引用算出 |
2008年度における猫の収容数が最も少なかった都道府県は福井県(1,216頭)で、次いで富山県(1,331頭)、秋田県(1,403頭)、石川県(1,704頭)、鳥取県(1,799頭)の順でした。
猫の返還・譲渡数では、北海道が最も多く(1,158頭)、次いで千葉県(1,041頭)、神奈川県(977頭)、新潟県(517頭)、愛知都(511頭)でした。
猫の殺処分数は福井県が最も少なく(1,032頭)、次いで富山県(1,322頭)、秋田県(1,394頭)、石川県(1,698頭)、鳥取県(1,767頭)でした。
収容数 | 返還・譲渡数 | 殺処分数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 富山県 | 1,722頭 | 北海道 | 3,232頭 | 福井県 | 1,341頭 |
2 | 福井県 | 1,768頭 | 千葉県 | 2,932頭 | 富山県 | 1,506頭 |
3 | 秋田県 | 2,083頭 | 愛知県 | 2,545頭 | 石川県 | 1,927頭 |
4 | 石川県 | 2,304頭 | 神奈川県 | 2,459頭 | 秋田県 | 1,947頭 |
5 | 鳥取県 | 2,421頭 | 東京都 | 2,113頭 | 鳥取県 | 2,171頭 |
※環境省ウェブサイトより数値引用算出 |
2008年度における犬猫の収容数が最も少なかった都道府県は富山県(1,722頭)で、次いで福井県(1,768頭)、秋田県(2,083頭)、石川県(2,304頭)、鳥取県(2,421頭)の順でした。
猫の返還・譲渡数では、北海道が最も多く(3,232頭)、次いで千葉県(2,932頭)、愛知県(2,545頭)、神奈川県(2,459頭)、東京都(2,113頭)でした。
猫の殺処分数は福井県が最も少なく(1,341頭)、次いで富山県(1,506頭)、石川県(1,927頭)、秋田県(1,947頭)、鳥取県(2,171頭)でした。
犬 | 猫 | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 東京都 | 81.5% | 北海道 | 16.2% | 北海道 | 30.5% |
2 | 新潟県 | 78.2% | 福井県 | 15.1% | 長野県 | 28.7% |
3 | 神奈川県 | 67.1% | 神奈川県 | 14.1% | 新潟県 | 27.2% |
4 | 長野県 | 66.4% | 新潟県 | 13.9% | 東京都 | 27.2% |
5 | 北海道 | 59.9% | 千葉県 | 11.6% | 神奈川県 | 26.9% |
※環境省ウェブサイトより数値引用算出 |
2008年度における犬の返還・譲渡率が最も高かった都道府県は東京都(81.5%)で、次いで新潟県(78.2%)、神奈川県(67.1%)、長野県(66.4%)、北海道(59.9%)の順でした。
猫の返還・譲渡率では、北海道が最も高く(16.2%)、次いで福井県(15.1%)、神奈川県(14.1%)、新潟県(13.9%)、千葉県(11.6%)でした。
犬猫合わせた返還・譲渡率では北海道が最も高く(30.5%)、次いで長野県(28.7%)、新潟県及び東京都(27.2%)、神奈川県(26.9%)でした。
2011年1月5日
後藤章浩(副会長・事務局長)


神奈川県の行政殺処分数は、2009(H21)年度で5,439頭でした。そのうち犬が515頭・猫が4,924頭で、前年度よりも犬が222頭・猫が908頭の減少でした。(図1参照)

神奈川県の自治体における犬猫の収容数は、2009年度で7,187頭でした。1993(平成5)年度からの推移をみてみると(図2参照)、殺処分率は増減しながらも近年では減少傾向にあり、2009年度では75.7%でした。

神奈川県には独立した動物行政が6つあります。政令指定都市である横浜市・川崎市・相模原市、中核市である横須賀市、その他に藤沢市があり、残りの市町村は神奈川県(県域)が取りまとめています。
県内の動物行政別で2009年度の殺処分数を見てみると、犬では県域が最も多く(256頭)、次いで横浜市(104頭)、川崎市(58頭)、相模原市(47頭)、横須賀市(30頭)、藤沢市(20頭)の順になっています。一方、猫では横浜市が最も多く(1,906頭)、次いで県域(1,734頭)、川崎市(816頭)、横須賀市(278頭)、藤沢市(159頭)、相模原市(31頭)の順になっています。(図3参照)

県内の犬の各自治体に収容された頭数の内訳は、2009年度で引取り(飼えなくなった犬)が483頭・捕獲が1,288頭でした。これは、上記で示した分類の、「飼い主がわからない動物(逃げ出した動物、飼い主がいない動物)」の数が多いことを表しています。また、地域別に見ると、捕獲数は「県域」が最も多いですが(547頭)、全体に占める割合(捕獲数/収容数)が最も多いのは横浜市でした(79.6%)。

県内の猫の各自治体に収容された頭数の内訳は、2009年度で引取り(飼えなくなった猫)が885頭・所有者不明引取りが4,531頭でした。これも、犬同様、上記で示した分類の、「飼い主がわからない動物(逃げ出した動物、飼い主がいない動物)」の数が多いことを表しています。また、地域別に見ると、所有者不明猫が最も多く収容された自治体は、横浜市の1,975頭(93.4%)でした。
2011年1月5日
後藤章浩(副会長・事務局長)
※「ペットの殺処分数」の「都道府県別」と「神奈川県」の項目中で、2009年度の「返還・譲渡率」と「殺処分率」の和が100%にならないのは、年度をまたいで返還・譲渡又は殺処分された個体がいるためです。